再三再四
Chapter8
案の定、親は二つ返事でオッケーをくれた。
いつもは気に食わないルーズさも、役に立つ時があるもんだ。
「すみません。私、やっぱり帰ります。さすがにここまではお世話にはなれません。それに祖父母が心配します」
「友達の家に泊まるって言ったら、喜びそうじゃない?」
「それは……非道いです」
「あははっ。ごめんごめん。でももう、外も真っ暗だしさ。遠慮なんかしなくていいから」
君は逡巡しているようだったけど、すぐに「わかりました」と頷いてくれた。
わたしは素直に嬉しかった。
しかし、ふと冷静になると、色々とカオスが蔓延してることが判明してくる。
夕食はあるもので作ればいいとして、その後。風呂……じゃなくて、風呂上り。
パジャマがない。
あと、ベッドも一つしかない。
「ごめん。パジャマ無いからさ、わたしのジャージで許して。あと、ベッドもわたしの使ってね。わたしは適当に居間のソファで寝るから」
「そんなのダメです。夜は冷えます。風邪、引いちゃいます」
「大丈夫大丈夫。ほら、馬鹿は風邪引かないから」
笑いながら言ってて、悲しくなる。
防寒の最善策なんて知ってるから、余計に。
「違います。私が……です。あの、別に私、気にしませんから、嫌でなければ一緒に――」
――どさり。
「ど、どうしたんですか?」
そして、“わたしたち”が始まったあの瞬間をもう一度。
今度はベッドの上で。
「アレ、もっかいしていい?」
「もう、してるじゃないですか……」
ああ。
わたし、やっぱりダメみたいだ。
「キスは?」
「……ダメです」
言わないけど可愛い。
言えないけど好き。
ため息が出る程、君にキスしたい。
「はぁ……。意地悪」
Continue.