再三再四
Chapter6
手、冷たいな。
無理させちゃったかな。
わたし、何故か常に手が温かいタイプの人で良かったな。
心は冷たいかもしれないけどね。
別にいいんだ。こういう時、役に立つから。
「手、温かいですね」
「お? 心が冷たいとか言うのかー?」
「いえ。心も、温かいと思います」
随分と良く言ってくれるなぁ。
やっぱり、小説やなんかを読んでいると、そういうロマンチックなワードの引き出しもたくさんあるのかね。
思えば、今まで付き合った人が体育会系のノウキンばっかりだったから、新鮮かも。
いや、別に付き合ってるわけじゃないんだけど。
手を繋ぐと何となく、そこの違いがはっきりと見えてくるから、なんだか不思議だ。
女の子の手ってこんなに小さいんだ、なんて思ったりもして。
繋ぎ方も繋ぎ方だしね。こう、指を絡めるスタイルのアレだからさ。
でも、たまにはいいなぁ。こういうのも。
男の人の手は硬くてごつごつしてるし不衛生そうで、握りたいとは思えないけど、君のはそんなことない。なにより柔らかいし、少しひんやりする感じが変にいやらしくなくていい。あと、下心が無い感じとかも。
なにそれ。
わたし、まるで……。
「あ。あの人たちって、ご友人さんたちですよね」
「えっ!? ホントだ、やばっ。隠れよ!」
「えっ」
間一髪で茂みに隠れるとか、どこの漫画だよ。
また手、引っ張っちゃったし。
あれ。でも。わたし、なんで隠れたんだろう。
別に、見られても悪いことなんかないのに。
「急にごめんっ。なんとなく、二人でいるとこ見られたくなくてっ!」
「それって……」
「あっ、いや、違うの! そういう意味じゃなくてっ」
「いえ。いいんです。私、そういう扱いには慣れてますから」
「ま、待って! 違うの! ごめんっ」
自分の気持ちが掴めなかったからこその誤解だった。
でも、君が行ってしまうのは嫌だ。
だから、私は立ち去ろうとする君の冷たい手をぎゅっと掴んだ。
身勝手な、わたしの温かさで。
「お願い……最後にもう一カ所だけ、わたしと……」