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再三再四

再三再四

前書き

 ――友チョコじゃない、かも…。

 私が好きになったのは人気者のクラスメイトじゃなくて、サッカー部のエースでもなくて。
 いつも教室の隅っこで本を読んでいる、愛想のない君でした。

 ため息が、出てしまうね――。

Chapter1

 隣の席のあなたは、クラスの中では目立つ方で、所謂地位の高いグループの一人。
 グループは男子数人と女子数人で構成されていて、授業中は何か手紙を交換したり携帯で連絡を取り合ったり、休み時間は楽しそうに話をしているのがよく目につく。
 対する私は、教室の隅で読書をしている方が落ち着くような、そんな裏方の人間。
 私があなたを羨むのは、教室の隅の席を取られたからであって、顔が広いからではないのだ。
 だから、あなたのことは、どちらかと言えば「嫌い」な部類になる。
 そうやって充実した日々を送る人たちは、テストででも失敗すればいいと思っていた。


 そんな冬の日の出来事。

 教室を出ようとドアを跨いだら、その先から急に飛び出してきたあなたと、私は衝突した。
 衝突して、私はしばらくあなたの下敷きになった。
 その間、私はあなたとトラバーチンを交互に見て、ゲシュタルト崩壊しそうだった。
「こういうの漫画でよくあるな」と思った。
 私とて漫画を読まないわけではない。
 漫画だと、そこから恋愛に発展するというのが鉄板の流れ、と言いたいところだけれど最近はそうでもないのかもしれない。使い古されていて愚昧だとか揶揄されるかもわからない。
 私の場合、そんなことを論じるまでも無かったけれど。


「あの。そろそろ退けてくれませんか?」
「え、あ、うん……ごめんね! 怪我とか無かった?」


 スカートの丈が短い人は、往々にして横暴だと思っていたから、あなたのその反応は意外だった。
 だからなに、ということもないけれど。


「大丈夫です」
「そっか。それならよかった」


 それは私も言うべき言葉なのだろうけれど、どちらかと言えば「嫌い」な相手であるために、ばつが悪い――以前に、私は溜息が出る程の人見知りだった。
「ホントごめんね。乗っかるつもりはなかったよ」
「いえ。私は大丈夫なので、気にしないでください。私、化学なので、急ぎます」
「あ、そうだったね……っていうか同じクラスだからわたしもか。準備してこないと」
 五分前予鈴が先刻に鳴ったから、今から実験プリント類を準備していたら確実に遅刻してしまう。
 それも私のせいで。
 私はあなたのように運動ができるわけもないから、それを吹聴されれば確実に内申に響く。
 そう思っただけの、至極単純な話。


「私の教科書、一緒に見ますか?」

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