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一期一会

Chapter3

「ねぇねぇ、藤森さん。藤森さんは宿題やった?」
「やりましたよ。見ますか?」
「わっ。ほんと? ありがとー! 助かるー」


 このところ明るくなったのもあって、葉月の元々の優しい性格が頭角を現し始めている。
 一部ではあるけれど、クラスにもしっかりと馴染むようになってる感じがする。
 クラスの隅で読書をしていた頃とは、かなり変わったと思う。
 誰かと仲良くしているのは、孤立しているよりはいいことだと思うし、葉月の気にしていた内申にもそっちの方が良いような気はする。何より、葉月の笑う姿が教室でも見られるのは嬉しい。
 嬉しいんだけど。


「藤森さんって優しいよねー」


 チクリ。


「うんうん。それになんかお姫さまっぽい。肌白いしー」


 チクリ。


「わかるー! ねぇねぇ、藤森さん。藤森さんは付き合ってる人とかいないの?」


 チクリ。


「はい。いますよ」


 胸がチクリチクリと定時で痛い。


「えーっ、まじ!? どんな人? やっぱ草食系?」
「草食系……? えと、出会いは肉食系だったかと思います」
「お、おおーっ。藤森さん、やり手やね……!」
「やり手、ですか……、ん?」


 俄かに目が合ったのに面食らって、思わず逸らしてしまった。
 ばつは悪いが葉月の前で格好がつかないので、もう一度向き直る。
 葉月の瞳は静かにこちらを見ていた。


「藤森さん、どうかした?」
「ふふっ。 なんでもありません。素敵な人ですよ。私、その人のこと大好きなんです」


 チクリ。チクリ。チクリ。


 息が詰まる。顔が熱くなる。動悸が脳を支配する。


 今、ものすごく、葉月が欲しい。

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