#03 YUINO & AINO
#03 YUINO & AINO
登場人物
温泉旅行の誘いを杏に断られた結乃は、代わりに妹の愛乃を誘って旅館へ。
非日常空間に身も心も委ね、姉妹は癒しのひと時を過ごすのだった――。
ふう。
結構いいところだね。
窓から見る山の景色が綺麗。
(杏と来られたらもっと良かったな……。)
(一緒に温泉入って、夜は……へへ。)
お姉ちゃん。
今、えっちなこと考えてたでしょ。
え?
そ、そんな杏のことなんて別に……。
はっ!
も〜。
わたしと来てるんだから、わたしに集中してよ〜。
気持ちはわかるけど。
そうだよね。ごめん!
……って、ちょっ!
なんでもう脱いでるの!?
ちゃんと向こうに脱衣所あるよ!?
わたし、服これだけなの〜。
汚したくないし、脱いじゃおうかなって。
なんか荷物少ないと思ったら……。
お姉ちゃんとだし、別によくない?
それとも――。
お姉ちゃんはわたしにも興奮しちゃう?
そ、そういう問題じゃないの!
そんな格好でいたら風邪引いちゃうでしょ。
ほら、わたしの着替え貸すから。
わ〜い。
じゃあ着る〜。
まったくもう……調子がいいんだから。
お姉ちゃんの匂いがする〜。
わたしの服だもん。
あ。
え。
臭い!?
いや、めっちゃ良い匂いだけど。
浴衣あったな〜と思って。
…………。
どうぞ、お好きな方で……。
じゃあお姉ちゃんかな〜。
ふふっ。そう?
お姉ちゃんはパパっぽい服好きだよね。
ア、アメカジね?
それだと男っぽく聞こえちゃう。
それで言うと、愛乃はママっぽいね。
かも〜。
アイドルみたいなフリフリはさすがにだけど。
似合うと思うけどなぁ。
かな〜。
あ。
ん?
アイドルになったら、メンバーと恋愛できる?
あぁ……。
まあ、そういう子もいるにはいるね。
拗れたら大変なことになっちゃうよ。
アイドルって恋愛禁止でしょ。
百合キャラってあるじゃん。
あれを使えば合法的にイチャつけそう。
そもそも違法じゃないけどさ。
あはは。
それはそうかもね。
でも、キャラってわかって恋するの辛くない?
楽屋ではバチバチだったりさ。
それはツラすぎる。
卒業したら鞍替えってのもねぇ?
わたしはお姉様一筋ですわ……!
って、ワケにはいかない?
ふふっ、それじゃアイドルというより「エス」だよ。
そうなれたらいいんだけどね。
まあ、事務所の意向には普通逆らえないから。
そっか。
それでも、事務所辞めてでも追いかけたら……。
素敵だね。
素敵だよね。
あ〜でも、そうだよね。
だから「キャラ」なんだね。
じゃなきゃ、ツラすぎるもん。
卒業する度にガチ泣きしてたらファンも応援しづらいよね。
そういうこと。
アイドルじゃないけど、昔は心中する子も多かったんだよ。
心中って……あの心中?
そう、一緒に死んじゃうってこと。
まだ女性が結婚戦略の道具だった頃ね。
女学校を卒業する=結婚で、後継を産むだけの人生。
女学校なんかでは疑似恋愛が流行ってて。
本当に愛し合ってた人たちも結構いたんだって。
それでも、卒業の時は近づいてくる……。
あなたと結ばれないなら、二人で永遠の時を……なんて。
そ、そんなっ……。
あっ、ごめん。
怖い話しちゃったね。
……平気。
でも、なんかちょっと複雑かも。
そのくらい好きだってことだもんね。
そうだね。
…………。
愛乃。
ん。
何かあったらお姉ちゃんに相談してね。
お姉ちゃんはいつだって愛乃の味方だから。
うん、ありがと……。ぐすっ。
わ、泣いちゃったの?
わかんない……。
なんか気持ちがクシャクシャって……。
そうだよね、ごめん、ごめんね。
よしよし。
(大人っぽいけど、まだまだ中学生だもんね。)
落ち着いたらお風呂行こっか。
……うん。
ねえ、お姉ちゃん?
んー?
今日、一緒の布団で寝てもいい?
!
も、もちろんいいよ。
…………。
お姉ちゃん。
なぁに?
今、一瞬迷った?
うっ。
ううんっ?
全然迷ってないよ?
うっそ〜。
バレバレだよ。
だ、だって……!
100%寝込み襲うでしょ!?
あら、襲うだなんて人聞きの悪い。
お姉ちゃんのムラムラを解消してあげようってね。
そういう妹の献身的なご奉仕ですわよ、お姉様?
えっちな百合漫画のセリフ!
お姉ちゃんそんな漫画読んでるの?
わたしにも貸して〜。
ダメに決まってるでしょ!
もー!
誰がこんな子に育てたのよーっ!
ん。
指差さないでよーっ!
知ってたわよーっ!
あはは。
お姉ちゃんおもしろ〜い。
はぁ……はぁ……。
まったく……ケロッとしちゃって……。
いいけどさ。
お姉ちゃん。
う、うん?
おっぱい触っていい?
ダメ。
吸うのは?
もっとダメだよ!
杏さんの領域?
そ……れはいま関係ない!
え〜。
お願い!
一回だけでいいから!
それはナンパの悪いやつ!
それじゃあ――。
わかった!
わかったよ!
もう触っていいから、吸うのとかは勘弁してよ……。
やった〜。
ただし、温泉入る時に少しだけね!
部屋でそんなことしてるの見つかったら……。
それはもう立派な「行為」だから……!
(それに、人目があったら変なことできないでしょ。)
わかった〜。
でも、いいの?
お風呂でって、それナマパイだよね。
わたしは別に服越しでも良かったんだけど……。
はぅっ……!
うぅぅ……。
…………。
うえぇぇぇぇん……!!
お〜よしよし。
わたしのおっぱい触る?
多分、杏さんとサイズ近いと思うんだよね。
うぇぇぇん……。
触るぅぅ……。
どうぞ〜。
あ、柔らかぁい……。
大きさは近いけど……。
杏のはもっと……もっとハリが……。
ハリ……が…………。
うわぁぁぁぁあん……!!
なんで来てくれないのぉぉ……!
一言で断るのやめてよぉ……!
温泉くらい一緒に行ったっていいじゃん!
お泊まりに期待したっていいじゃんかぁぁ……!
よしよし。
悲しかったね〜。
いっぱい泣いていいからね〜。
それとも吸う? 吸っちゃう?!
吸わないぃぃ……!
(ちゃんと正気だよ。)
(これは恥ずかしいやつだ。)
よちよち。
落ち着いたらお風呂行きまちょうね〜。
うん……。
お姉ちゃん。
うん。
お酒飲む?
…………。
……………………。
………………………………。
……飲む。
付き合うよ。
わたしはジュースだけど。
飲んじゃお?
なんてできた妹ッ……!
(……そうかな?)
(でも、お姉ちゃんの一番はわたしがいいな。)
(なんて……ちょっと独占欲強すぎかな?)
――ぷはぁ!
そんなに一気に飲まないの。
(お酒くさいの苦手なんだよね〜。)
(お姉ちゃんと絡み増えるからプラマイゼロかな〜。)
それにしても……。
お姉ちゃん、ホント杏さんのこと好きだよね〜。
好きぃぃ……!
優しくて、なんでもできてかっこよくて。
わたしに希望をくれる人なんだぁ。
あとは、笑った顔がすっごく可愛いの!
わたしの前じゃ、あんまり笑わないんだけど……。
はゆちゃんとだとすぐ笑うのにね。
頬が緩むというか。
そうなのぉ……。
気を許してくれてると思ってたんだけどなぁ……。
それで、はゆちゃんにまで妬いちゃうの。
いい大人が、教師が、生徒相手に……。
うくっ……。
それは杏さんが悪いね。
杏は悪くないのっ。
わたしが卑しいのっ。
あ、ハイ。
キスしたいよぉ〜。
しよ〜。
ダ〜メ。
今はお酒飲んでるから。
(妹相手にディープ前提。)
(ま、今更か~。)
(にしても、だいぶ酔ってるね〜。)
(温泉はお預けかな?)
じゃ、明日起きたらしていい?
おはようのキス。
なにそれ。
え。
キュンとした。
あ。
お?
はゆちゃんもしてるのかな……。
今も時々一緒に寝てるって言ってたし……。
ないない。
はゆちゃん絶対ノンケだもん。
(まあ、そういうことに抵抗もなさそうだけど。)
(先輩衆の中だと、野々宮センパイかな〜。)
(はゆちゃんに向けるあの視線……多分、ね。)
じゃあ、わたしたちは特別だね。
そりゃそうだよ〜。
えっち以外のこと大体してるもんね〜。
ね〜。
だって、愛乃のこと大好きだもん。
わたしもお姉ちゃんのこと大好き〜。
今夜、一線越えちゃお?
ダ〜メ。
愛乃のことは妹として愛するって決めてるの。
それ以外のことならなんでもしてあげる〜。
絶対お姉ちゃん満足させられるのに〜。
させられちゃいそ〜。
わたしネコだからな〜あははは〜。
え、意外。
杏さんが攻めるんだ。
わたしの反応見るの好きなんだって。えへへっ。
でも、わざとらしいのは嫌だって言うの。
全然わざとじゃないんだけど。
普段あんまり「可愛い」とか言ってくれないのにさ。
する時ばっかり、耳元で何回も言うんだよぉ。
好きな人にそこまでされたら……ねぇ?
そんなの我慢できないじゃぁん。
だからいつもちょっと声とか我慢気味で……あれ?
愛乃、顔赤いよ……?
うっそ、恥ず〜。
お姉ちゃんのお酒うつったかな……。
あは……想像しちゃった?
し、しちゃったよっ。
……声とか。
うふふっ。
お姉ちゃんも恥ずかしいなぁ。
(一番恥ずかしいのは勝手に暴露された杏さんだけど。)
(そして、またわたしに弱みを握られる大人たちであった。)
(めでたしめでたし♡)
END