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あいxあゆ

#02 ブルージーな朝の教室

#02 ブルージーな朝の教室

登場人物

生徒もまばらな朝の教室。
愛乃の元気がないことに気付いたあゆは、ぶっきらぼうにもコミュニケーションを試みる。


はぁ……。

ため息つくと幸せが逃げてくわよ。

あ、あゆちゃんおはよ〜。
ねぇ聞いてよ〜。

どうせまた、フラれたとか言うんでしょ。
知ってるわよ。

ひど〜い。

ま、そうなんだけど〜。

そうなんじゃない!

……で。

今度はなんでフラれたの?

ちゃんと聞いてくれるあゆちゃんしゅき〜。

今日の一校時目は――

うそうそ。

あのさ、わたしって好きになるとガチ恋じゃん。

ガチ鯉?

遊びで付き合ったりしないってこと。

あ、ああ……。

…………。

し、知ってたわよ!

そ、それで?

うん。

昨日ね。

デートして、その帰りにね。
まだ帰りたくないね〜ってなって……。

(あ。)

(これ、あゆちゃんに言っていいのかな。)

それで?

え、え〜と。

そう!

お泊まり!

お泊まりをね、したんだけど。

お泊まり……!

それは……楽しそうね。

うん。
楽しいのは楽しかった。

じゃあいいじゃない。

それはそうなんだけど。

楽しすぎたというか、気持ちが乗りすぎたというか。

わたしだけ盛り上がっちゃったんだよね。

そんなのいつものことじゃない。

うえ〜ん。
あゆちゃんがひどいこと言う〜。

もーめんどくさい!

結局なんなのよ!

あ〜、うん。

告白っぽいこと言っちゃったんだよね。

そしたら引かれちゃった。
セフ……友だちなのに、重いってさ。

はぁ……。

ふうん。

なるほどね。

なるほどね?

なんとなくわかるかも。
その友だちの気持ち。

え?

多分、そのままの関係でいたかったのよ。

恋人になるってことは、友だちじゃなくなるってことでしょ?

そう思ったから、うんって言わなかったんだと思う。

だから、あんたのこと嫌いってわけじゃないわよ。

あゆちゃん……。

あゆちゃんにしてはマトモ〜。

…………。

ごめん。

もういいよ。

(作り笑い、気付かないと思ったのかな。)

ねえ。

ん。

あゆちゃんはさ。

どっからが友だちの好きで、どっからが恋人の好き?
いつどのタイミングで変わる?

さあ?

好きって思ったら好きなんじゃない?

それは愛乃にしかわかんないよ。

でも――。

愛乃は間違ってないよ。

(かっこよ。)

あゆちゃんって、時々そーゆーこと言うよね。

なに?

バカにするならもう聞いてあげないから。

ち、違うよっ。

嬉しいな〜って。

だ〜い好き♡

またそうやってふざけて……!

ちゅ〜……はダメか。

ぎゅ〜……もダメか。

まったくもう……。

…………。

ほら。

えっ?

ぎゅう、してあげる。

……マジ?

ま、まじだってなんだっていいじゃない!

あゆがぎゅうしてあげるって言ってるの!

今ならそんなに人いないし、するならさっさとしなさいよ!

え、えぇ……急かすの〜……。

あ〜でも、うそ、めっちゃ嬉し〜。

じゃ、じゃあ……。

うん。

…………。

(高いボディソープの匂い……いや、香水?)

(これはママの趣味かな。)

(腕細〜。肩小っちゃ〜。可愛い〜。)

(胸は……まだかな。)

(あ、変態っぽいかも?)

す〜〜〜〜は〜〜〜〜。

ちょっとぉ!

も、もう終わり!
バカ!

あ〜。

足りない……。
足りないよ……。

だ、め!

それに。

これ以上は……あんたもわかってるでしょ。

うん。

(ま、奇異の目で見られるのなんて慣れてるけどね。)

ありがと、あゆちゃん。
すっごい元気出た。

そ、そう。

(よかった……喜んでくれたみたい。)

で。

わたしのおっぱいどうだった?

た、大したことないわね?

あはは。

(あ、笑った。)

ふっ。

あんただって、匂いなんか嗅いじゃって。
そんなにあゆの匂いが良かった?

うん。結構好き。

大人っぽい匂い。

……って、言われたくてママの香水使ってるでしょ?

なっ……!

だてに女の子吸いしてないよ〜。

でも、ちゃんとあゆちゃんの匂いも好きだよ。

体育の後とか。

それ、汗の匂いじゃないの!

え?
匂いって普通そうじゃない?

男女でもそうでしょ?

へ、変態!

えぇ……。

(でも、あゆの匂いは……好き、なのね。)

(それならまあ、今日は許してあげなくもないかな。)

それにしても意外だったな。

まさか、あゆちゃんからハグしてくれるなんて。

さすがのわたしもドキッとしちゃった〜。

(それだけ心配させちゃったってことだけど。)

別にドキッとさせるつもりはなかったけど……。

落ち込んだ時とか、パパがこうしてくれるの。
頭撫でてくれたりとか。

あ、甘えてるわけじゃないわよ!
パパが勝手にしてくれるってだけだから!

うんうん。
わかってるわかってる〜。

またバカにして!

もう知らない!

ふん!

あゆちゃ〜ん。

……ふふっ。

(きっと恋人にはならない……なれないんだろうけど。)

(この気持ち、いつか何倍にもして返すからね。)

あ……。

お姉ちゃんが言ってた気持ちって、これかな。

うん。

悪くはない、かな。

(こんな朝の教室でっ! きらら展開がっ!)

あ、奇異の目で見られてた。

END